全学自由研究ゼミナール

「視覚の数理 --- エッシャーの秘密を数理で探ろう」

2006年夏学期(火曜第5限) 杉原厚吉


はじめに

グラフィックアーティストとして活躍したオランダのエッシャーは、不思議な作品をたくさん残していることで有名である。その主なものは、2種類に分類できよう。第一のグループは、平面への図形の敷き詰めを素材にしたもので、第二のグループは、不可能な立体の絵を素材にしたものである。エッシャーは、これらの素材を生かして、すばらしい作品をたくさん世に出し、世界中の人々を驚かせた。

本ゼミナールでは、これら二つのグループの作品を、数理的に分析し、その秘密に迫る。前者の図形の敷き詰めは、タイル貼りの数理と深く関係している。また、後者の不可能物体は、投影の幾何学、コンピュータビジョンの数理と深く関係している。目標は、エッシャーの絵の構造を数理的に理解し、自分でも同じような絵が描けるようになることである。

最後に、エッシャーを越えて、エッシャーが絵に描いたものを、立体として作るための数理的方法論についても考えたい。この最後の部分は、絵を理解するコンピュータを作りたいという数理工学の研究の中から生まれた副産物である。


ポイント1

エッシャーの作品の中のタイル貼りを素材にしたものと、だまし絵を素材にしたものに焦点を合わせ、これら二つのグループの作品群を数理的に分析し、その秘密に迫る。そして、そのような作品の作り方を数理的に明らかにする。これは、数理と芸術の接点のひとつの姿を知ることでもある。

ポイント2

エッシャーの作品を分析し理解するという目的のもとに、関連する数学を勉強する。タイル貼りの数理では、図形の変換群、非ユークリッド幾何学などを学ぶ。だまし絵の数理では、立体幾何学、投影変換、射影変換、組み合わせ幾何学、曲面の幾何学、線形代数などを学ぶ。さらに、それらを具体的な問題に応用する数理工学の姿も学ぶ。

ポイント3

エッシャーを越えて、エッシャーが絵に描いたものを、立体として作るための数理的方法論についても考える。これによって、不可能と思われることを実現したいという夢を持ち、それに挑戦する「ものづくり」の心を学ぶ。そして、そのようなものづくりに「数理」という方法論が大きな威力を発揮することも学ぶ。

参考

参考ページ1 参考ページ2


第1部 タイリングとアート

1.幾何的対称性と周期的タイリング

2.エッシャー化の方法

3.さまざまなタイリング

4.双曲幾何学と非一様タイリング

第2部 不可能空間の心理と数理

5.頂点辞書と線画解釈、だまし絵の描き方

6.不可能立体の作り方その1:奥行きのトリック

7.不可能立体の作り方その2:曲面のトリック

8.不可能立体の作り方その3:非直角のトリック

9.立体実現問題の数理

第3部 創作活動と発表会